全5回シリーズの本年度支部研修会は続く

1.第3回支部研修会が開かれる

10月12日(木)午後6時15分から、ふじみ野市産業文化センター第2会議室で第3回の支部研修会が開かれました。

テーマは、「成年後見制度の基礎3」として、「法定後見制度の利用」とされました。

講師は、支部会員で司法書士も兼業されている朝倉保彦会員が担当されました。同会員は、リーガルサポートのメンバーでもあり、既に相当数の後見を受託された経験をお持ちです。

朝倉保彦講師

講義は、まず、最高裁判所家庭局がまとめている「成年後見関係事件の概況」の紹介から進められました。

平成28年1月から同12月までの実績を分かりやすいグラフと概要説明の書かれた資料で丁寧な説明がありました。

それによると、成年後見関係事件(後見開始。補佐開始、補助開始及び任意後見監督人選任事件)の申立件数の合計は、34,249件(前年は34,782件)で、対前年比は、約1.5%の減少となっていたということです。ここ5年間を振り返ると、ほぼ毎年34,000件台で推移していることも分かりました。

2.成年後見制度の利用の進め方

制度の利用の話に入る前に、講師から、現在政府が進めている「成年後見制度の利用促進計画の3本柱」についての言及がありました。

その1は、「地域ネットワークの構築」、その2は、「中枢機関の設置」、その3は、「不正防止の徹底」であることに触れられました。

その後、本論に戻り、以下のように研修が進められました。

(1) 手続きの流れ、として、『成年後見教室』(実務実践編3訂版)の216頁以降を参照されながら、具体的な書類の書き方や必要書類の確保に進まれました。

(2) 添付書類・申立費用、として、同書248頁以降を丁寧に解説されました。

(3) さらに、さいたま家庭裁判所が発行している「成年後見申立の手引き」を引き合いに出されて説明を重ねられました。

その中で、新しい仕組みとして「後見制度支援信託」が紹介されました。これは、本人の財産のうち、日常的な支払をするのに必要十分な金銭を預貯金等として後見人が管理し、通常使用しない金銭を信託銀行等に信託する仕組みで、被後見人本人の財産を適切に保護するための方法の一つとされている、ということです。

熱心に聴き入る受講者

講師から席上配布された参考資料は、いずれも、実務に取り組むのに必要不可欠な要素を網羅されたものがきっちり綴られていて、受講者にとっては、いわば「お宝」になりそうなものばかりで、ありがたかったです。

3.第4回支部研修会が開かれる

12月14日(木)午後6時15分から、ふじみ野市産業文化センター第2会議室で第4回の支部研修会が開かれました。

テーマは、「成年後見制度の基礎4」として、「法定後見の実務:家庭裁判所Q&Aの検討」を行うことが中心とされました。

講師は、今シリーズ、二度目の登板、支部総務担当理事の杉本佳久会員です。

講師は、まず、成年後見業務に取り組むに当たっては、「要件事実」ということの重要性を強調されました。

杉本佳久講師

制度の運用に当たっては、関係法令の条文を十分読み込むことが基本であることを強調されました。ことに、物事には、「原則」がある一方で、「例外」もあることを常に意識する必要があることを説かれました。

講師によれば、我々、行政書士の業務の多くは、自己完結的、言い換えれば、「点」で形成されていることが多いが、成年後見業務は、そのほとんどが、“継続する業務”であり、いわば「面」とか「線」が複雑に絡み合うとも見ることができること、また合わせて、後見業務では、本人の気持ちに寄り添う、言い換えれば、「本人の気持ちを尊重することが出発点である」と力説されました。

4. Q&Aをヒントに参加型研修スタイルに

その後、講師のリードで、さいたま家庭裁判所の「後見人等Q&A」(平成27年2月)を順次参照しながら、講師が受講者に問い掛けをし、受講者が答えたことをさらに材料にしながら、ディスカッションを深化する形で研修が進められました。

特に講師が複数の受講者に繰り返し投げ掛けた設問は、「被後見人が自分の財産を浪費しようとしていると感じたときの判断のポイントは何か?」と言うものでした。

講師と受講者のディスカッション

回答を求められた複数の受講者からは、いろいろな観点からの意見が発表されましたが、講師は、「判断のポイント」として、「必要性」「合理性」及び「許容性」の3点を挙げられました。確かに3点とも重要なポイントであると、得心できました。

研修の後半の時間を利用して、家裁のQ&Aの「付録」である「財産管理Q&A(チェックリスト)」の「財産の管理方法」についての8項目、「支出の可否」についての15項目の「〇」「×」「△」の判定を試みることに移りました。

資料の設問には、解説が書かれてはいるのですが、受講者にとっては、大いに判断に迷うものが多く、仮に後見業務を新たに引き受けた場合には、非常に頼りになる参考資料であることを再確認することができました。

お話を聞くだけよりも、講師との意見交換の中で、知識がより多くかつ正しく吸収されたように感じられました。